歌う人 と つくる人 の 化学反応?

文:タクティカル(TMP)

音楽を聴くときにいつも気になるのは、作曲者や作詞者、編曲者が誰なのか?ということです。誰が歌っているのかということよりも、誰がつくっているのか、ということが、曲を聴く基準になることが多いのです。

歌手の声が重要なのはいうまでもありませんが、それと同じく曲の表情を決定づけるのは、作り手の感性です。

最近リリースされた楽曲の中にも、その化学反応に撃ち抜かれた作品がいくつかあります。

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楽しい蹴伸び
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アーティスト_Chara+YUKI
サウンドプロデュース_TENDRE

Chara+YUKIの約20年ぶりの新曲は、TENDREプロデュース。

一聴した瞬間、イントロのコード感から心掴まれます。Charaのかすれた声が、囁くようなコーラスでうまく生かされています。跳ねるベースやスネアの音色は、いかにもTENDRE。音の重心は低めに、でも特徴的な2人の歌声が、そこをライトに可愛く整えているイメージ。

Charaは、古くは小林武史、近年はmabanuaやkan sano、ケンモチヒデフミなど気鋭のプロデューサーたちとの共作を続けていて、ベテランながら、毎回あたらしい音に挑んでいるので好きです。

特に、mabanuaがプロデューサーを務めた『恋文』は、少ない音数で歌声を引き立たせながらも繊細なサウンドメイキングで、高い完成度を持った楽曲だと思います。

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ビジネスはパーフェクト feat.スチャダラパー
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アーティスト_香取慎吾
プロデュース_スチャダラパー

元SMAP、新しい地図の香取慎吾は、今年の1月1日にニューアルバムをリリース。WONK、ぼくりり、SALU、yahyelなど、よだれがでるような音楽家たちをフィーチャーして制作されています。

そのどれも素晴らしいのですが、スチャダラパーとの共作「ビジネスはパーフェクト」は、ラップのスキルや自由な生き方がにじむ、楽しい曲。

サウンドはスチャダラパーらしくラフでノイズがかった感じ、そこに香取慎吾のラップが違和感なく乗っていくさまは、4人が遊ぶように曲作りをしている姿が目に浮かぶよう。

そういえば、同時期にリリースされた木村拓哉のニューアルバムも、様々なアーティストからの曲提供を受けて制作されていました。SMAP時代からつづく、最先端のセンスを咀嚼して自分の表現にするというスタイルが、どちらにも確実に息づいています。

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ドレミソラシド
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アーティスト_日向坂46
プロデュース_秋元康

これは1年くらい前の曲ですが、とにかく衝撃だったので。

前から思っていることですが、秋元康の歌詞には、やたらと「僕」という言葉が出てくる。男子目線の曲が多いということですが、ほかのアイドルでもそれは同じかもしれません。ただ、秋元康が書くと、やけにそこが引っかかる。

同じく、「〜だろう」とか、「〜だ」という言い回しもとにかく頻繁に登場します。あと、堅い熟語表現もよく出てくる。こういったいかにもな「文章っぽさ」のようなものが、男子特有のぎこちない感じにつながっているのではないかと、なんとなく思います。そしてそういう歌詞を、若い女性アイドルの言葉にして歌わせるところが、違和感の塊です。

タイトルも、引っ掛かりのある言葉のオンパレードという感じ。『ドレミソラシド』もそうで、ファが抜けてるだけでこんなに耳に残るなんて、大発明だと思います。新曲の『ソンナコトナイヨ』も、カタカナにするだけで、ダサいけどインパクト絶大になる。

でも、そこが不思議と気持ち悪くない。いいアイドルソングとして成立しています。それは、ひとえに秋元康の詞のメッセージと、それを発信する立場としての今の彼女たちのマッチングに他ならないと思います。その嗅覚が天才。

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歌う人とつくる人が合わさって、音楽はできています。そこに意識を向けながら聴いてみると、作り手のいろいろな工夫が見えてきて、より重層的なたのしみ方ができるはずです。