形態素解析で見るBUMP OF CHICKENの歌詞の変遷

こんにちは、TMP OBのikeda(https://twitter.com/ikedaosushi)です。普段はつくばに住みながらエンジニアをしていて、ちょくちょくTMPのイベントにも参加させてもらってます🙌

今回はBUMP OF CHICKENの歌詞の話を書きます。自分のここ1, 2年のフェーバリットはFKJやNight Tempoで、どちらかというとR&BやHiphop、サンプリング音楽への嗜好が高まっているのですが、BUMP OF CHICKENだけは別枠という感じでずっと大好きです。

aurora arc

今年の7月にBUMP OF CHICKENの3年半振りとなるアルバム「aurora arc」が発売されました。

Amazonより(https://www.amazon.co.jp/dp/B07PPDX5GB)

「aurora arc」は名盤で、個人的にはファンからの人気が高い「ユグドラシル」や「orbital period」に引けをとらない完成度だと思います。

錆びない感性が現れる歌詞

aurora arc」を聞いて一番印象的だったのは歌詞です。実は作詞をしている藤原さんは今年40歳なのですが、20代に書いた歌詞と同じレベルの感性が現れている歌詞が今作にも多数あり、驚きました。

例えば「aurora arc」に収録されている「話がしたいよ」という曲があります。この曲は「君」と離れて1人になって街で生活する中で「君」のことを考える、という歌です。

持て余した手を 自分ごとポケットに隠した
バスが来るまでの間の おまけみたいな時間
街が立てる生活の音に 一人にされた
ガムと二人になろう 君の苦手だった味

BUMP OF CHICKEN / 話がしたいよ from aurora arc (2019)

この曲を聞いたときに思い出した曲がありました。「jupiter」に収録されている「ベル」です。この曲も同じように、「君」と離れた後に電車や家で過ごす心情から曲が始まります。

重い体を 最終列車に乗せて
揺れながらなぞる 今日の事
ホームに降りて 気付いた事は
無くした切符と 猫背の僕

BUMP OF CHICKEN / ベル from jupiter (2002)

十代の頃は「君」と出会ったり別れたりするのが一大イベントなので、「ベル」に強く共感していたんですが、年齢を重ねるにつれて出会いと別れが繰り返され、自分の中では正直こういう感覚が薄れていってしまっていました。

「ベル」が書かれたのは2002年で、藤原さんは23歳に書いた歌詞と同じレベルの感性を持った歌詞を40歳の今でも書いている、ということに衝撃を受けました。

長くなってきたので切り上げますが、このように20代前半と変わらない感性で書かれた歌詞に衝撃を受けたアルバムでした。

歴代の歌詞を形態素解析してみる

今回の本題に移ります。上記のような経緯があり、「本当にBUMP OF CHICKENの歌詞は変わっていないのか」という疑問が湧き上がりました。変わっていない、と感じたのはあくまで自分の主観なので事実として確かめたくなりました。

そこで自然言語処理として形態素解析を行い、可視化することでそれを少し確かめてみることにしました。

ワードクラウド

アルバムごとにワードクラウドを作成してみました。

FLAME VEIN (1999)

最初のアルバム「FLAME VEIN」では、曲数が少ないこともあり、単語を見るだけでどの曲のワードがわかりますね。この後のアルバムと比較すると明確なのですが、芯となるテーマのようなものがまだ確立されていないことがわかります。

THE LIVING DEAD (2000)

2枚目の「THE LIVING DEAD」はレコーディング期間が約一週間というタイトなスケジュールで作成されたことで有名なアルバムです。「信じる」「失う」「走る」「笑う」など他のアルバムと比べて動作に関するワードが多いのが特徴的だと思いました。

jupiter (2002)

3枚目は「jupiter」です。「自分」「気付く」などこの後数枚に渡って取り上げられるテーマが垣間見えています。「明日」はそれなりにずっと使っているイメージだったのですが、割合的に最も多く使われているのがこのアルバムなようです。

ユグドラシル (2004)

4枚目は「ユグドラシル」です。このアルバム以降「世界」(の何か)に「気付いて」しまった「自分」「僕ら」という構図で曲が作られていると推察できます。

orbital period (2007)

5枚目は「orbital period」です。「ユグドラシル」に引き続き「自分/僕ら」と「世界」の対比をこのアルバムでも見ることができます。

COSMONAUT (2010)

6枚目は「COSMONAUT」です。音楽的な意味でも転換点になったこのアルバムですが、歌詞においても前作「orbital period」の「自分/僕ら」から「あなた」へ視点が大きく変わっていることがわかります。

RAY (2014)

7枚目の「RAY」でも前作から継続して「あなた」という視点で歌詞が描かれています。またメインテーマは「自分/僕ら」「あなた」「世界」ですが、それを描くための補助的なパーツとして「場所」「言葉」は一貫して使われていることもここまででわかります。

Butterflies (2016)

8枚目の「Butterflies」ではまた大きな変化があり、「あなた」から「自分」に対象が変わっています。ただ「ユグドラシル」「orbital period」ほど主張はしておらず、その代わりかはわかりませんが「どこ/ここ」というより抽象的な言葉が使われはじめていることが読み取れます。

aurora arc (2019)

そして、今作の「aurora arc」です。前作の傾向がさらに強くなり、「僕ら」や「あなた」ではなく、「世界」、「どこ/ここ」のようにより抽象的な概念で歌詞が書かれていると言えそうです。

もちろんアルバムを聞いている方はわかると思うのですが、「自分/僕」「あなた/君」は初期アルバムから「aurora arc」でも一貫して使われています。ただ傾向として特定の主体を対象にした歌詞からより抽象的な主体で書かれる歌詞が増えてきたことは1リスナーとしても感じます。

「aurora arc」の中で個人的に好きな「望遠のマーチ」では、「僕」や「君」でなく「心」や「今日」というようなより抽象的な概念が主語になっているのが印象的です。

心はいつだって 止まれないで歌っている

繰り返す今日だって 今日だって叫んでいる

BUMP OF CHICKEN / 望遠のマーチ from aurora arc (2019)

もともとの主題だった「本当にBUMP OF CHICKENの歌詞は変わっていないのか」という疑問ですが、ワードクラウドを用いた可視化による分析では、「ユグドラシル以降一貫したテーマを書いている」中で「変化をしており、近年ではより抽象的な主体が唄われている」と言えそうです。

アルバムごとの歌詞の長さ

これはおまけですが、「アルバムごとに歌詞の長さ」が変わっているのかも気になったので見てみました。アルバムごとの歌詞の文字数の分布をプロットしています。(バイオリンプロットと言います。)

「COSMONAUT」までは1アルバムに1曲は800字クラスがあったのがかなり特徴的だと思いました。800字は一般的な原稿用紙2枚ぎっしりなので相当な長さです。笑

「aurora arc」はタイアップ曲/シングルカットの割合が多かったのが理由の1つだと思いますが、歌詞の文字数の分散が他のアルバムに比べて圧倒的に少ないのが興味深かったです。

さいごに

7月に「aurora arc」を発売したBUMP OF CHICKENの歌詞を形態素解析で分析して、簡単に考察してみました。TMPには自分以外にもBUMPファンが何人かいるのでBUMP好きな人は是非イベントに来て話しかけてくれたら嬉しいです!

需要あるかわかりませんが、使ったコードは↓においてあります。
https://github.com/ikedaosushi/python-sandbox/blob/master/bump-of-chicken/2019-08-11_bump-of-chicken.ipynb