ASMRな音楽【イヤホンorヘッドホン推奨】

先日、アメリカの音楽メディアPitchforkから“How Billie Eilish Became an ASMR Icon”(ビリー・アイリッシュはいかにしてASMRのアイコンとなったのか)というタイトルの記事がアップされました。現在世界を席巻するポップ・アイコンであるビリー・アイリッシュのサウンド・プロダクションと、近年YouTubeを中心に流行しているASMRとの関係性について言及したものです。

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)とは、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良さや頭がゾワゾワする感覚、またはリラックスできるような感覚・反応のことを指します。
通常、ASMRの動画はバイノーラル録音や立体音響を使用して製作され、その点でビリー・アイリッシュのサウンド・プロダクションとは一線を画するものですが、彼女のウィスパー・ボイスや過剰に強調された低音の扱い方はASMR特有のゾワゾワ感・不安感に近接したものを感じさせます。

Billie Eilish – bury a friend

また、YouTube上にはビリー・アイリッシュをよりASMRっぽく聞こえるようにカバーした動画や、音の定位を操作したリミックス動画が数多く見られます。
このように、ASMRとは異なる方法・志向性をもって製作された音楽が、音響の微妙なテクスチャーから「ASMRっぽい」と形容されるようなことが今後増えそうな気がしています。

そこで今回は、筆者が「これはASMRっぽい!」と思った音楽をいくつかご紹介します。ぜひ聴いてみてください。イヤホンorヘッドホン推奨です。

Matmos – Silicone Gel Implant

Matmosの2019年作『Plastic Anniversary』からの1曲。このアルバムのコンセプトにはプラスチックによる海洋汚染への問題提起が含まれており、様々なプラスチック製品やそのゴミが楽器として使用されています。収集されたゴミの山で、音を収集するメンバーの動画も挙がっています。プラスチックによって生み出された音の粒子が渦巻く様子に不思議と心地よさを感じます。

Eli Keszler – Lotus Awnings

ニューヨークのパーカッショニスト/サウンド・アーティストであるEli Keszlerの2018年作『Stadium』からの1曲。硬質なドラミングにダブっぽい低音が重なり、緻密でありながらもダイナミックな曲となっています。こだわり抜かれた音響と、エレクトロニカやフリージャズなどのジャンルを横断する即興的な展開からは音楽の枠組みを越えた空間性を感じることができます。

Holly Herndon – Interference

Holly Herndonの2015年作『Platform』からの1曲。ベースミュージックを解体・再構築する過程でボイス・サンプルを有機的にコラージュさせた実験的な曲となっています。拡張されたヒトの声と、様々な形にすり潰された電子音の組み合わせは不気味でありつつも革新的です。Holly Herndonは、今年発表されたニューアルバム『PROTO』の中でもAIを使用した楽曲製作を行っており、飽くなき探究心をもって新たな音楽にアプローチしているアーティストのひとりであると言えます。

以上、「これはASMRっぽい!」と思った音楽をいくつか挙げました。今回紹介した音楽には、いわゆるASMR動画のように癒し効果を得られるような音楽は少ないですが、素晴らしい作品ばかりです。ぜひアルバム単位でも聴いてみてください。(furuta)