音楽×テレビがもたらす最大値【永コラム】

 近年、時期を問わずに大型の音楽番組が放送されるようになってきている。様々なコラボを企画したり、ミュージカルを採り入れたりと各局が躍起となって工夫を凝らしているが、私はいつまでも音楽番組の頂点は大晦日の紅白歌合戦であり続けると思っている。一年に一度だけ、本当に良質な音楽や魅力的なパフォーマンスをつくりあげたアーティストが選ばれ、渾身の楽曲を披露する。サッカーでいうところのワールドカップであり、お笑いでいうところのM-1グランプリであるといえるだろう。

 なかでも昨年末の紅白はとにかく見応えがあったし、何度も見返したくなる場面がいくつもあった。音楽の持つ力が、テレビというコンテンツを通じて最大限に拡張された大晦日だった。あれから3か月がたった今、録画一覧を遡り、改めてあの興奮を振り返ってみた。

シティポップがお茶の間へ

 私が小さい頃は、紅白というと演歌ばっかりでつまんない番組、でもおじいちゃんおばあちゃんが観てるから仕方なく観る、というイメージがあった。現在は演歌歌手の出場数がぐっと減り、子どもや若者にも親しみやすいようなつくりになっている。我々にとっては嬉しいことだが、少し若者に寄せすぎている部分も感じられる。例えば、Suchmosの出場には驚かされた。「臭くて汚ぇライブハウスから来ましたSuchmosです、よろしく」Vo.YONCEがそう告げ、ロシアワールドカップの映像を背に『VOLT-AGE』の演奏が始まった。そもそもSuchmosのようなシティポップが若者文化であるのに加えて、この楽曲がなかなかにチルい。ゆったりとしたリズムがNHKホールに響き渡るその光景は、音楽の多様化とシティポップの大衆化を表していて、音楽シーンの変革を感じるものだった。

ベテランの底力

 若手が頭角を現し、ベテランが黙っているはずもない。椎名林檎と宮本浩次『獣ゆく細道』は圧巻の一言だった。静と動、力と技の相反する存在が豪華な面々の演奏のもとで混ざり合い、重厚なハーモニーを響かせていた。畳みかけるように松任谷由実が姿を現す。ユーミンといえば、昨年のサブスク解禁が目新しい。解禁されたその日にしばらく聴き入っていたのを覚えている。誰もが知っていて誰もが口ずさめる『ひこうき雲』『やさしさに包まれたなら』を披露し、ベテランの強さを見せつけた。お笑い界にも同じことが言えるのだが、上の世代が強すぎる。ベテランたちが一切衰えることなく永遠に業界に君臨し続けているこの環境のおかげで、若手はより鍛錬を積むことができるのだろう。

画面いっぱいの多幸感

 そしてテレビでしか、紅白でしか観られなかったであろうサザンオールスターズの爆発力について書かないわけにはいかない。原由子の爽やかなキーボードから始まる『希望の轍』は何度聞いても新鮮で心が惹きつけられてしまう。40年のキャリアは伊達じゃない。立て続けに軽快なリズムとともにコール&レスポンスが繰り広げられ、『勝手にシンドバッド』へとなだれ込んだ。全出演者が桑田佳祐の後ろへ回り、紅白の、そして2018年のフィナーレにふさわしい最高の盛り上がりをみせていた。桑田が北島三郎と笑顔を交わし、ユーミンと肩を寄せ合うその光景は多幸感でいっぱいで、何とも言えない高揚感に包まれていた。

 その光景は、どんな音楽フェスでも絶対に見ることができないだろう。テレビという強大なコンテンツがあることによって実現するこの最高の空間が、未来永劫続いてほしい。音楽の持つ力、テレビの持つ力がそれぞれ個別で大きくなっていくことで、それらが掛け合わされた時の力は幾千にも膨れ上がり、私たちにもっともっと素晴らしい光景をもたらしてくれるだろう。

文責:永村